たとえたった10分だけでも


俺は君に会いたいんだ


会えないと1日がたまらなく寂しく感じるから





3限と4限の間の休み時間。俺は足取り軽くB組の教室へむかう。

出てくる前にまた友達に「キモい」って言われたけど、そんなの気にならないもんね。



だってこれから大好きなアノ子に会いにいくんだから。


「奈穂〜っ」


元気よく叫んで扉を開け放つ。

最初に部活仲間と目があった。またかよ、て顔される。いいでしょ別に。

窓際の席で友達と話してた奈穂が、俺の呼びかけに顔をあげた。柔らかい茶髪が揺れる。

席をたって、小走りで俺のところに来てくれた。

ああぁ今日もかわいいな、もう!


「どしたの和也」

「数Tの教科書忘れちゃった〜貸してっ」

「えぇーまたぁ?」


呆れたように眉根をよせる、そんな顔も大好き。

しょうがないなぁって言いながら教科書を手渡してくれる時に触れる、あたたかな手のぬくもりも

近くに来たらふわりと香るシャンプーの匂いも

君のすべてが、俺は大好きなんだよね。


「奈穂ありがとっ終わったら即返しにくるから〜」

「これから気をつけてよね」

「わかってるよ〜」


ごめんね、奈穂。


俺ダメなやつだからさ


また忘れちゃうよ


毎日毎日


奈穂と被ってる授業を必死に見つけて


少しでも多く君に会えるように


始業ベルギリギリまでねばった俺は、奈穂の教科書を右手に持って足取り軽く廊下を行く。




「明日は、何忘れようかな〜」




こんなこと、君には絶対言えないね。



でも、こんなしょうもないことをしちゃうくらい、俺は君が大好きだよ。






君のためなら、何千回でも俺はいく



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